THM 精密溶接機のティー・エイチ・エム株式会社

YAGレーザーの原理や特徴、
実用化されている分野を紹介します

レーザーは、溶接・切断・マーキング・クリーニングなど、自動車、二次電池など現在の工業界における多くの加工にとって必要不可欠な技術になっています。レーザーにはさまざまな方式がありますが、高いエネルギーで溶接・切断などが行えるのがYAGレーザーです。その発生原理、レーザー光のしくみ、他のレーザーとの違い、レーザー溶接機の特徴、デメリットなどについて解説していきます。

YAGレーザーの原理

レーザーは意外に歴史が古く1960年、エネルギーを増幅し利用する技術として、ルビーに照射した光の増幅に成功したことで発明されました。現在では、レーザーは、切断・穴あけ・接合・表面改質などの加工において必要な技術になっています。
また、レーザーの種類は、その発振媒体の種類により、固体レーザー、液体レーザー、気体レーザー、化学レーザーに分類され、さらに励起方式や波長によって数十種類にも及びます。
今回はこの中のでも一般的に産業用途で使用されているYAGレーザーについて原理から説明していきます。

1964年にベル電話研究所で開発

YAGレーザーは1964年に、米国ベル電話研究所のJ.E.Geusicらによって開発されました。YAGは、(Yttrium Aluminum Garnet、イットリウム・アルミニウム・ガーネット)の頭文字を取ったもので日本語ではヤグと発音されます。

YAGレーザーは固体レーザー

YAGレーザーは、イットリウムとアルミニウムを鉱物結晶構造の人工ガーネット構造にしたものに、希土類元素を添加、発振媒体にした固体レーザーです。
固体レーザーは、液体や気体のレーザーに比べて、単位体積あたりのレーザー出力が大きいため、共振器が小さくても大きなレーザー出力が得られるというメリットがあります。

添加材にNd3+を使用したNd:YAG

YAGのドープ(添加)材としてはNd3+が使用され、Nd:YAGと呼ばれます。NdはYAG中において、一定の間隔で存在させる必要があるためNdの比率は1-2%ぐらいです。
この動作媒質がドープされたYAGロッドをキセノンフラッシュランプやLD(ダイオードレーザー)で光励起し、動作物質に反転分布をつくり、光を出します。
ドープされた動作媒質が3+のイオン状態なので、イオン結合による原子は外部から電子を受けやすく、これが原子の励起に繋がります。
励起されたエネルギーが下位レベルに落ちて基底レベルに戻るときにNd:YAGではλ = 1064nmの光が放出されます。

第二世代のYAGレーザーはYbによるレーザー励起

第二世代のYAGレーザーは、ファイバーレーザーと同じ、Ybを活性元素とした半導体レーザー励起が発生原理であり、発振効率が20-30%と高くなっています。
媒質形状は冷却性能に優れた薄いディスク型で、熱歪みの発生を補償する構造で、ファイバーレーザーに近い集光性があります。そこで、産業界ではファイバーレーザーと競合する形でよく使われています。

YAGレーザー溶接の仕組みと注意点

次にYAGレーザー溶接のしくみと注意点について、見ていきます。

YAGレーザー溶接の仕組み

発振器、光ファイバー、出射ユニットで構成

YAGレーザーの溶接機は、発振器、光ファイバー、出射ユニットより構成されます。
発振器は、レーザー光を増幅して出力し、光ファイバーはレーザー光を伝送するために使用されます。光ファイバーには、SI タイプとGI タイプの2つの種類があり、用途に応じた直径のタイプを使用します。
出射ユニットは、光ファイバーを通じて伝送されたレーザー光をワークに照射するものです。レンズ構成で、ナゲット径を調整することもでき、CCD カメラ付きのタイプなどもあります。

伝送損失の低い光ファイバーを使った伝送

伝送方式がミラーに限られるCO2レーザーに対し、YAGレーザーでは、伝送損失の低い光ファイバーを使った伝送も可能です。
光ファイバーによる伝送が可能であることから、FA化が容易となり、様々な製造ラインで使用されています。

レーザー光線を共振器で増幅

YAGロッド両端の外側には、光学研磨された高精度のミラーである共振器が配置されており、YAGロッドから発振されたレーザー光線はこの共振器で増幅され、そのエネルギーが強力な光の束となって出射口に伝わります。
出射ユニット内に配置されたレンズでさらに集束し、その高い密度の光エネルギーが対象ワークにあたり、吸収することで、瞬間的に温度が上がり、溶融するに至ります。

YAGレーザー光の注意点

YAGレーザーは、JIS C6802 「レーザー製品の安全基準」に規定されているクラス4に分類され、反射光も危険であるとされています。万一、目に入ってしまった場合は、網膜、視神経や目の中心部の損傷を引き起こし、大きなダメージを受けます。
また、水晶体を損傷して白内障が起きる危険性もありますので、取扱いには注意が必要です。

YAGレーザー溶接のメリット・デメリット

ここまでYAGレーザー溶接機の原理や仕組みを紹介してきましたが、
実際にYAGレーザーを使用した場合、どのようなメリットがあるか、
また、デメリットはどのようなものがあるか紹介していきます。

YAGレーザー溶接のメリット

薄ものの溶接に最適

YAGレーザーは、高ピーク・短時間での溶接が特徴です。
1ショット当たり数ミリ秒の短時間で行われるため、母材への入熱が少なく、ゆがみの少ない溶接が可能です。
また、溶接スポットの大きさはファイバー径やレンズの組み合わせでφ0.2~1.0㎜程度まで調整することができ、広く浅い溶接から、エネルギーを集中して深溶け込みをすることもできます。

狙った場所を正確に、非接触で溶接できる

YAGレーザー溶接ではCCDカメラを使用して、溶接個所を観察しながら加工することが一般的です。狙った場所を正確に、非接触で溶接できるため、FA化が容易といえます。

ファイバーの付け替え/分岐が容易

YAGレーザー溶接機は、その仕組みから、一つの溶接機からレーザー光を複数分岐することができます。同時に多点溶接することや、複数の溶接個所にそれぞれ出射ユニットを配置して、順番に溶接することも可能です。また、ファイバーケーブルも交換することができ、スポット径の調整も容易です。

YAGレーザー溶接のデメリット

デメリットとして挙げられるのは消耗品やメンテナンス作業が必要になってくる点です。使用頻度によりますが、励起用のフラッシュランプや冷却水などを定期的に交換する必要があります。溶接機内部で光学部品が使用されているため、クリーニングや調整などの定期的なメンテナンス作業も必要です。
また、前述しましたように、レーザー光が目に入った場合、網膜、視神経、水晶体の損傷などが起きる可能性がありますので、人体への危険度が高いことにも気をつけましょう。

YAGレーザーが活用されている事例

YAGレーザー溶接は自動車・医療などさまざまな分野の溶接に活用されています。具体的にどのような分野で使われているか紹介していきます。

自動車業界

自動車業界では、エンジン部品やハーネス部品、各種センサーの溶接に使われています。

二次電池業界

二次電池業界では、リチウムイオン電池の溶接、電池のタブ付け、電池ケース封止溶接などに使われています。

通信機器業界

コネクタや、各種センサーの溶接に使用されています。薄いステンレスを使用した部材の溶接が多く、幅広いスポットでの強度を出すのに有効です。

まとめ

このように、YAGレーザーには、その発生原理からさまざまなメリットがあり、幅広い分野で使われています。
近年ではファイバーレーザーの登場により、競合するような形になっていますが、高ピーク・短時間での溶接や、分岐仕様での同時多点溶接などではメリットがある溶接機といえます。
対象ワークの形状やライン構成によって適したものを選びましょう。

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